サインなし、COA(ペストコントロール発行の鑑定書)あり
バンクシーが日本へ贈る平和への祈り。硫黄島で撮影されたあの写真がモチーフ。
バンクシーの作品の中でも、日本との結びつきが強い作品が、この《Flag》だ。
モチーフとなった「硫黄島の星条旗」は、1945年度のピューリッツァー賞に輝いた報道写真。第二次世界大戦中、アメリカの従軍カメラマン、ジョー・ローゼンタールが撮影したものだ。
硫黄島は、太平洋戦争の激戦地のひとつ。バンクシーはなぜ、悲惨な過去を想起させるような場面をモチーフに選んだのか?
まさに、私たちが“戦争”という史実を見せつけられて“悲惨さ”を感じるところこそポイントだ。ローゼンダールの写真が大量に出回ったことから分かるように、当時のアメリカにおいて、「硫黄島の星条旗」のイメージは勝利を象徴するポジティブなものだった。
硫黄島は当時から東京都の一部であり、上陸した米軍に日本軍が必死に抵抗していたが、攻防の末に米軍が制圧。日本軍が拠点としていた摺鉢山の頂上に、アメリカの海兵ら6人が星条旗を立てる様子がカメラに収められている。
しかし《Flag》に描かれているのは、ぼろぼろの車の上で星条旗を掲げる子どもたち。鑑賞者に与える印象は勝利の熱狂ではなく、むしろ戦争で疲弊した人々のやるせなさである。控えめに輝く画面からは神聖さも感じられ、子どもたちが戦争の悲惨さを訴えているかのようだ。硫黄島を制圧された日本にだけでなく、戦争が勝敗にかかわらず多くの悲しみや苦しみをもたらしたことを、この作品は思い出させてくれる。
他の多くのバンクシー作品と同じように、《Flag》から何を受け取るかは鑑賞者に委ねられているが、バンクシーが繰り返し反戦のメッセージを発してきたことは心に留めておくべきだろう。
出典元:http://www.jamespfaff.com/
Banksy
バンクシー
風刺で世界へメッセージを発信し続ける神出鬼没の覆面グラフィティアーティスト
名前や姿を一切明かさず、世界各地のストリートにグラフィティを描いたり、自作を美術館に無断展示する覆面アーティスト。
1990年頃からイギリスのストリートで活動を始め、2005年のMoMAや大英博物館に無許可で自身の作品を展示するパフォーマンスで世界的に話題になる。現代社会や政治を風刺するダークユーモア溢れるステンシル絵画は、落書きでありながら非常に多くの人に愛されている。政治的メッセージを含む作品が多く、世界各地にゲリラ的に出没して作品を残している。日本では2019年に東京都・港区の防潮堤にバンクシーの作品と思われるネズミの絵が発見され、騒動になったのも記憶に新しい。
高額で売買される現代アートの世界には一貫して批判的な態度を取っているが、皮肉にも近年バンクシーの作品価格は急騰している。2018年の「シュレッダー事件」では自身の作品が落札された瞬間に作品がシュレッダーにかけられるという衝撃的な報道で世界を騒がせた。これを機にバンクシーの名は普段アートに関わらない層にも広く知られ、21世紀前半のアート界のスターとしての地位を不動のものとし、2021年にはコロナ禍で医療従事者を称賛した作品《Game Changer》が約25億円で高額落札され、自身のオークションレコードを更新した。
出典元:http://www.jamespfaff.com/
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